カバン
「硬く熱いメンタル」を作るための2つの習慣
ドイツ伝説のGK、オリバー・カーンのメンタル術
カーン独特の「頭の中のカバン」
ドイツ代表はこれまでに数々の名ゴールキーパー(GK)を生み出してきた「GK大国」として有名だ。中でもオリバー・カーンは、2002年W杯の闘志あふれるプレーで日本でも知られる存在になった。ブラジルとの決勝では好セーブを連発しながらも、自分のミスからゴールを決められて優勝を逃し、試合後にポストにもたれてうなだれる姿は多くの人の胸を打った。
カーンは2008年に現役を引退し、現在はドイツ国営放送の解説者として活躍している。現役時代の荒々しいスタイルとは打って変わり、理論と経験を織り交ぜたわかりやすい解説が人気だ。
また、執筆活動にも力を入れており、2010年に『Du packst es!』(君ならできる!)という本を出版した。経験談とともにカーン流のメンタル術がふんだんに紹介されている名著だ。
今回はその本の中から、最もビジネスパーソンに役立ちそうなメンタル術を取り上げたい。
同書のモチベーションに関する章において、カーン独特の「頭の中のカバン」という概念が登場する。イメージ上の仮想のカバンのことで、その中に特別な道具を入れておけば、モチベーションを上げたり、怒りを鎮めるときに役に立つ……というのがカーンの考え方である。
カーンの「頭の中のカバン」には、2つのスプレーが入っている。
ひとつ目は、怒りや焦りを抑える「クールダウンスプレー」だ。
サッカーの試合中には、相手からの挑発や審判の誤審など、感情をかき乱すことが次々に起こる。カッとなって相手に報復のファールをして、退場になってしまう選手も少なくない。
だが、カーンは怒りを完全にコントロールすることができる。なぜなら「頭の中のカバン」から「クールダウンスプレー」を取り出し、爆発しそうな怒りにシューッとスプレーを吹き付けるからだ。
すべてイメージ上の作業だが、スプレーという道具を使ってワンクッション置くことで、目の前の現象をより客観的にとらえられる。自分自身に「冷静になろう」と言葉をかけるより、はるかに効果的だ。
この「クールダウンスプレー」は、チームメイトへの嫉妬や焦りにも使える。
まだカーンが25歳のときのことだ。期待されてバイエルンに入団しながら、試合中に味方と衝突し、全治6カ月の大ケガを負ってしまった。練習できない日々が続き、自暴自棄になってもおかしくなかった。だが、そうなるたびに「クールダウンスプレー」を取り出して、焦りを鎮めたのである。カーンはわずか4カ月で復帰して、正GKの座を取り戻した。
防護スプレーの使い方
2つ目のスプレーは、ネガティブな気持ちを抑える「防護スプレー」だ。
プロサッカー選手は、結果が出なければメディアからの批判にさらされ、試合中には相手ファンから野次を飛ばされる。
ときには味方ファンからも厳しい言葉が飛ぶ。カーンがバイエルンに移籍した当初、なかなかチームの結果が出ず、「移籍した正GKを連れ戻せ!」という歌を味方ファンから歌われてしまった。
そんなときカーンは、「頭の中のカバン」から「防護スプレー」を取り出し、虫よけのスプレーを使う要領で、自分の身に振りかける。そうすると悪いうわさや悪口の持つ毒性を和らげることができるのだ。
そもそもカーンが「頭の中のカバン」を作ったのは、GKになるためのビジョンを、つねに意識すべきだと考えたからだ。
「世界で愛されるGKになりたいという情熱」と「8万人の観客と無数のTVカメラに囲まれてプレーする熱狂」をカバンに詰め込み、迷いが生じそうになるたびに、2つのビジョンを取り出して夢を再確認した。
カーンは本の中でこう記している。
「もし困難な状況に陥ったら、『自分は試されている』と考えるんだ。次のステップに進む準備はできているか、すべてを捧げることができるか、とね」
カーンはモチベーションの塊のような選手と思われていたが、やはり彼も人間だ。弱さも、迷いもある。だが、カバンとスプレーという手法を確立したことで、鉄のように硬く、火のように熱いメンタルを作り上げることに成功したのだ。
選手だけでなく、一般の人にとっても、カーン流の仮想スプレー活用術は参考になるはずだ。
By 東洋経済オンライン 2013.6.10
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ドイツ伝説のGK、オリバー・カーンのメンタル術
カーン独特の「頭の中のカバン」
ドイツ代表はこれまでに数々の名ゴールキーパー(GK)を生み出してきた「GK大国」として有名だ。中でもオリバー・カーンは、2002年W杯の闘志あふれるプレーで日本でも知られる存在になった。ブラジルとの決勝では好セーブを連発しながらも、自分のミスからゴールを決められて優勝を逃し、試合後にポストにもたれてうなだれる姿は多くの人の胸を打った。
カーンは2008年に現役を引退し、現在はドイツ国営放送の解説者として活躍している。現役時代の荒々しいスタイルとは打って変わり、理論と経験を織り交ぜたわかりやすい解説が人気だ。
また、執筆活動にも力を入れており、2010年に『Du packst es!』(君ならできる!)という本を出版した。経験談とともにカーン流のメンタル術がふんだんに紹介されている名著だ。
今回はその本の中から、最もビジネスパーソンに役立ちそうなメンタル術を取り上げたい。
同書のモチベーションに関する章において、カーン独特の「頭の中のカバン」という概念が登場する。イメージ上の仮想のカバンのことで、その中に特別な道具を入れておけば、モチベーションを上げたり、怒りを鎮めるときに役に立つ……というのがカーンの考え方である。
カーンの「頭の中のカバン」には、2つのスプレーが入っている。
ひとつ目は、怒りや焦りを抑える「クールダウンスプレー」だ。
サッカーの試合中には、相手からの挑発や審判の誤審など、感情をかき乱すことが次々に起こる。カッとなって相手に報復のファールをして、退場になってしまう選手も少なくない。
だが、カーンは怒りを完全にコントロールすることができる。なぜなら「頭の中のカバン」から「クールダウンスプレー」を取り出し、爆発しそうな怒りにシューッとスプレーを吹き付けるからだ。
すべてイメージ上の作業だが、スプレーという道具を使ってワンクッション置くことで、目の前の現象をより客観的にとらえられる。自分自身に「冷静になろう」と言葉をかけるより、はるかに効果的だ。
この「クールダウンスプレー」は、チームメイトへの嫉妬や焦りにも使える。
まだカーンが25歳のときのことだ。期待されてバイエルンに入団しながら、試合中に味方と衝突し、全治6カ月の大ケガを負ってしまった。練習できない日々が続き、自暴自棄になってもおかしくなかった。だが、そうなるたびに「クールダウンスプレー」を取り出して、焦りを鎮めたのである。カーンはわずか4カ月で復帰して、正GKの座を取り戻した。
防護スプレーの使い方
2つ目のスプレーは、ネガティブな気持ちを抑える「防護スプレー」だ。
プロサッカー選手は、結果が出なければメディアからの批判にさらされ、試合中には相手ファンから野次を飛ばされる。
ときには味方ファンからも厳しい言葉が飛ぶ。カーンがバイエルンに移籍した当初、なかなかチームの結果が出ず、「移籍した正GKを連れ戻せ!」という歌を味方ファンから歌われてしまった。
そんなときカーンは、「頭の中のカバン」から「防護スプレー」を取り出し、虫よけのスプレーを使う要領で、自分の身に振りかける。そうすると悪いうわさや悪口の持つ毒性を和らげることができるのだ。
そもそもカーンが「頭の中のカバン」を作ったのは、GKになるためのビジョンを、つねに意識すべきだと考えたからだ。
「世界で愛されるGKになりたいという情熱」と「8万人の観客と無数のTVカメラに囲まれてプレーする熱狂」をカバンに詰め込み、迷いが生じそうになるたびに、2つのビジョンを取り出して夢を再確認した。
カーンは本の中でこう記している。
「もし困難な状況に陥ったら、『自分は試されている』と考えるんだ。次のステップに進む準備はできているか、すべてを捧げることができるか、とね」
カーンはモチベーションの塊のような選手と思われていたが、やはり彼も人間だ。弱さも、迷いもある。だが、カバンとスプレーという手法を確立したことで、鉄のように硬く、火のように熱いメンタルを作り上げることに成功したのだ。
選手だけでなく、一般の人にとっても、カーン流の仮想スプレー活用術は参考になるはずだ。
By 東洋経済オンライン 2013.6.10
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