パーキング
一流選手はなぜ”ミス”を引きずらないのか?
細貝萌とドイツ代表の心理操作術
どんなに強いメンタルを持っている選手でも、どんなに経験を積んだベテランでも、悩みが頭から離れず、試合に集中できないことがある。
ドイツ代表のミロスラフ・クローゼはブレーメンでプレーしているとき、ある事実無根の噂に悩まされていた。大衆紙に「妻がチームメートと不倫関係にあり、妊娠した」という記事が出たのだ。完全なでっち上げなのだが、クローゼはプレーに集中できなくなり、スランプに陥ってしまった。
悩みは頭の一部に“駐車”する
そんな危機を救ったのが、ドイツ代表のメンタルトレーナー、ハンス・ディーター・ハーマンだった。スキーやハンドボールなど、あらゆるアスリートのパフォーマンス向上を担ってきたスペシャリストは、こうアドバイスした。
「どうしても気になってしまう思考があったら、一度、頭の一部にパーキング(駐車)しなさい。それについては後で考えればいい。パーキングすれば、他のことに集中できるようになる」
クローゼはこれを実践して少しずつ調子を取り戻し、2005-06シーズンにドイツリーグの得点王に輝いた。さらに2006年W杯では、5点を決めて大会の得点王に。のちにクローゼは「メンタルトレーナーのおかげで試合に集中できるようになった」と感謝の言葉を贈った。
ハーマンはこう説明する。
「選手には2つのタイプがある。1つは直感的に、感じたままに行動する選手。FWに多いタイプだ。もう1つは理論的に考えて行動する選手。後者のタイプのほうが周囲の状況に敏感なので、それに合った対処をするのが望ましい」
もちろんこの心理操作術を応用している選手は、彼だけではない。日本代表の細貝萌(独レバークーゼン)は、試合中にミスを犯した後の気持ちの切り替えに「パーキング」を使っている。
もともと細貝は繊細なタイプで、ミスをした後に心理的ショックを引きずってしまうのが課題の1つだった。いったい、どうすれば気持ちをうまく切り替えられるのか? そんな悩みを抱えていたとき、対処法を教えてくれたのが松本大学でスポーツ心理学を教える齊藤茂だった。
齊藤がアドバイスしたのは、次のようなことだ。
「ミスは頭の中の駐車場に一時停車しておいて、目の前のプレーに集中しよう。反省や修正は、試合が終わった後に好きなだけやればいい」
パーキングの技術は仕事にも応用できる
細貝はこれを辛抱強く実践して、見事に課題を克服した。
『Number(771号)』に掲載された細貝のインタビュー記事の中で、こんなメールが紹介されている。細貝が齊藤に宛てたメールだ。
「自分のファールから失点し、とにかく1度駐めておこうと、パーキングを使いました。試合で使ったのははじめてです。すぐには出てこなくて、失点して少し経ってから思い出しました。もう少し早めに、自然に使えれば、もっとうまく切り替えられた気もします」
この「パーキング」の技術は、仕事場にも応用できるだろう。上司に何か言われて腹が立ったとしても、専用の駐車場にしまっておけば、感情をコントロールできる。仕事のミスが頭から離れないときも、駐車場に押し込んでしまえばいい。
考えるべきでないときに、いくら熟考してもプラスにはならない。頭の中にいろいろな引き出しを作っておいて、必要ないときはそこにしまい込んでおけばよいだろう。
By 東洋経済オンライン 2013.3.14
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細貝萌とドイツ代表の心理操作術
どんなに強いメンタルを持っている選手でも、どんなに経験を積んだベテランでも、悩みが頭から離れず、試合に集中できないことがある。
ドイツ代表のミロスラフ・クローゼはブレーメンでプレーしているとき、ある事実無根の噂に悩まされていた。大衆紙に「妻がチームメートと不倫関係にあり、妊娠した」という記事が出たのだ。完全なでっち上げなのだが、クローゼはプレーに集中できなくなり、スランプに陥ってしまった。
悩みは頭の一部に“駐車”する
そんな危機を救ったのが、ドイツ代表のメンタルトレーナー、ハンス・ディーター・ハーマンだった。スキーやハンドボールなど、あらゆるアスリートのパフォーマンス向上を担ってきたスペシャリストは、こうアドバイスした。
「どうしても気になってしまう思考があったら、一度、頭の一部にパーキング(駐車)しなさい。それについては後で考えればいい。パーキングすれば、他のことに集中できるようになる」
クローゼはこれを実践して少しずつ調子を取り戻し、2005-06シーズンにドイツリーグの得点王に輝いた。さらに2006年W杯では、5点を決めて大会の得点王に。のちにクローゼは「メンタルトレーナーのおかげで試合に集中できるようになった」と感謝の言葉を贈った。
ハーマンはこう説明する。
「選手には2つのタイプがある。1つは直感的に、感じたままに行動する選手。FWに多いタイプだ。もう1つは理論的に考えて行動する選手。後者のタイプのほうが周囲の状況に敏感なので、それに合った対処をするのが望ましい」
もちろんこの心理操作術を応用している選手は、彼だけではない。日本代表の細貝萌(独レバークーゼン)は、試合中にミスを犯した後の気持ちの切り替えに「パーキング」を使っている。
もともと細貝は繊細なタイプで、ミスをした後に心理的ショックを引きずってしまうのが課題の1つだった。いったい、どうすれば気持ちをうまく切り替えられるのか? そんな悩みを抱えていたとき、対処法を教えてくれたのが松本大学でスポーツ心理学を教える齊藤茂だった。
齊藤がアドバイスしたのは、次のようなことだ。
「ミスは頭の中の駐車場に一時停車しておいて、目の前のプレーに集中しよう。反省や修正は、試合が終わった後に好きなだけやればいい」
パーキングの技術は仕事にも応用できる
細貝はこれを辛抱強く実践して、見事に課題を克服した。
『Number(771号)』に掲載された細貝のインタビュー記事の中で、こんなメールが紹介されている。細貝が齊藤に宛てたメールだ。
「自分のファールから失点し、とにかく1度駐めておこうと、パーキングを使いました。試合で使ったのははじめてです。すぐには出てこなくて、失点して少し経ってから思い出しました。もう少し早めに、自然に使えれば、もっとうまく切り替えられた気もします」
この「パーキング」の技術は、仕事場にも応用できるだろう。上司に何か言われて腹が立ったとしても、専用の駐車場にしまっておけば、感情をコントロールできる。仕事のミスが頭から離れないときも、駐車場に押し込んでしまえばいい。
考えるべきでないときに、いくら熟考してもプラスにはならない。頭の中にいろいろな引き出しを作っておいて、必要ないときはそこにしまい込んでおけばよいだろう。
By 東洋経済オンライン 2013.3.14
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